前回は、新型コロナの特質を、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授と国立感染症研究所の情報を基に、以下のようにまとめました。
・感染力の高さと重篤化・致死の恐れ
・無症状・軽症者の一定数の存在(30~50%)
・症状がなくても他人にうつす(感染させる)場合がある
・ワクチンはまだなく、終息まで長期化が見込まれる
・日本において感染流行の第3波・第4波は必ずくる
そして、これらが現下の「緊急事態」の原因となっているわけですが、経済への影響はどのように見られているのでしょうか。
「世界恐慌以来、最悪の不況になる」とIMF
IMF(世界通貨基金)は4月6日発表の経済見通し(World Economic Outlook)で、2020年の世界経済の成長率を「前年比マイナス3%」と予測し、次のように述べています。
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The world has changed dramatically in the three months since our last World Economic Outlook update on the global economy.
It is very likely that this year the global economy will experience its worst recession since the Great Depression, surpassing that seen during the global financial crisis a decade ago.
前回の世界経済に関する見通しから3カ月で、世界は劇的に変化した。
今年の世界経済は、世界恐慌(1929年~1930年代後半)以来最悪の不況となる可能性がきわめて高く、10年前の世界的な金融危機(リーマン不況)を上回る。
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上図は、IMFによる「世界全体」「先進国・地域」「新興市場・発展途上国」の経済見通しです。新型コロナが2020年の世界経済に深刻な影響を与えることが示されています。
それを主な国・地域別にまとめたのが下図です。日本はマイナス5.2%、ヨーロッパは軒並みマイナス7%を超える落ち込みになっています。
◎IMFへのリンクはこちら
日本経済への影響、「9年ぶりに2年度連続のマイナス成長」と三菱総研
日本経済への影響については、さまざまなシンクタンクが見通しを発表しています。
三菱総合研究所は、4月6日発表の「新型コロナウイルス感染症の世界・日本経済への影響と経済対策提言」の中で、「2020年度は9年ぶりに2年度連続のマイナス成長」として、次のように指摘しています。
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20年1-3月期は、国内外での新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、2四半期連続で大幅なマイナス成長を見込む。19年度は前年比▲0.3%と5年ぶりのマイナス成長を予測する(前回予測値(3月9日時点)は同▲0.2%)。
20年度の実質GDP成長率は、新型コロナウイルスによる経済活動抑制が20年6月末にピークアウトする場合が前年比▲0.5%(シナリオ①)、20年12月末にピークアウトする場合が同▲1.7%(シナリオ②)と、いずれも2年度連続でのマイナス成長を予想する(前回は同0.0%)。
21年度は、シナリオ①で前年比+1.7%、シナリオ②で同+2.9%と伸び回復を見込む(前回は同+0.7%)。新型コロナウイルスによる経済活動抑制の反動に加え、消費税増税による影響の一巡、東京オリンピック・パラリンピックの開催も成長押し上げ要因となる。ただし、経済活動の抑制が21年にずれ込む事態となれば、景気回復は見込めない。
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下の最初の図表が、新型コロナウイルスによる経済活動の抑制が2020年6月末にピークアウトした場合の日本の実質GDPの成長率予測、2番目の図表が2020年12月末にピークアウトする場合の予測です。いずれにしても深刻な景気後退が見込まれています。
◎三菱総研のレポートへのリンクはこちら
「上場企業の売上高に与える影響は約108兆円」と野村総研
次のデータは、野村総研が4月30日に発表した日本の業種別売上高の予測です(レポート名は「ベイズ構造時系列モデルを用いた新型コロナウイルスが産業に与える影響の予測」)。同レポートでは、「上場企業の売上高に与える新型コロナの影響は約108兆円、最も影響が大きい業界は輸送機器業界、影響のピークは20年第一四半期」として、さらに新型コロナによる業種別売上高を予測しています。医薬品を除くすべての業種が新型コロナの直撃を受け、2020年度を通して前年同期の売上高を下回ることが予測されています。
◎野村総研のレポートへのリンクはこちら
「2020年12月収束の場合、301万人が失業」と大和総研
そして、新型コロナの影響を雇用の観点で見たのが、大和総研が4月27日に発表した「新型コロナ感染拡大で迫る雇用危機」です。同レポートは「新型コロナによる事業環境の急速な悪化で、今後は賃金や雇用の大幅な調整に踏み切る企業が全国的に増加する可能性がある」として、次のように指摘しています。
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感染が6月に収束するシナリオの下、2020年の雇用者数は前年から99万人程度減少する見込みだ。この場合、失業率は2019年の2.4%から3.8%程度まで上昇する。(中略)
これに対して感染が年末まで拡大するシナリオでは、雇用者数が2019年に比べて301万人程度減少し、失業率は6.7%程度に達すると試算される。
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日本の就業者数は2020年3月現在6700万人、完全失業者数は176万人ですから、感染が2020年6月に収束すると仮定した場合は、就業者数は99万人減の6601万人、完全失業者は275万人、12月収束の場合の就業者数は6399万人、完全失業者は3月時点の2.7倍の477万人となる計算です。つまり、とてつもない規模の労働力が企業から失われる、というのです。
◎大和総研のレポートへのリンクはこちら
では、かつてない景気低迷のプレッシャーが企業に重くのしかかり、これまで以上に労働力に余裕がない中で、企業が取るべき方策とはどのようなものでしょうか。
今回は、RPAを取り巻くマクロの経済状況を見てみました。次回は、新型コロナが促すソーシャル・ディスタンスや在宅勤務(テレワーク)などの状況に触れながら、RPAをめぐる環境の変化を考えてみたく思います。(2020.5.2)
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◎シリーズ|新型コロナとRPA◎CONTETS
シリーズ|新型コロナとRPA(1)~RPAはどのような認識の下に活用すべき?
シリーズ|新型コロナとRPA(2)~RPAをめぐる経済環境の激変
シリーズ|新型コロナとRPA(3)~ソーシャルディスタンスについて考える